うんざりするようなショックについて
人はどうしようもない衝撃を受けたらどう反応するか。
私の場合、ひたすら眠る。とにかくあらゆる体の機能を、スイッチを切ってしまうのだ。かすかな糸口を探らなければならない場合には、ざわつく胃のあたりを押さえながら考える。
寝ても起きても考えている。
結構論理的なのだ。
自分でも知らなかったけど。
努力をしない?根気がない? 本気にならない?
これらの性質もすべて当たっているかもしれないから黙っているのだ。
ショックについて、話を戻すと、まだ私が25歳の頃の話だ。
東京から帰省した私に、中学時代の友達から連絡があって遊びに行った。
お互いに独身で、話すことはいろいろあるはずだったからだ。
隣の部屋から彼女が乳児を連れてきて、私の赤ちゃんです。
と見せたときに、その衝撃に襲われた。
どうにかこうにか会話を続けた。たぶん普通に話していたと思う。
家に帰ると、顔も洗わず部屋に入って次の朝まで眠った。
何も考えることはなかった。
あれが。これまで生きてきて受けた、どうしようもないショックの上位に入るだろう。
あれ以来逢ってもないが、おそらく立派に成長しただろう。
他にもひどいショックを受けているが、かなり免疫が出来ている。
人に対する態度は一貫して柔和を心がけているが、
今でも人に弱いから悪いと一方的に非難されてしまう。
もしそれが本当で、強くならなければ生きていけないのなら、私なりに弱点を補って強味を磨かなければならない。
何にも悪いことをしてなくて、ただ黙って生きている人でも陰口によって本気で非難されるって、相当理不尽だけどまさに今の私の状況そのままで、
昔読んだ吉田戦車の「伝染るんです」のネタにもあって爆笑した記憶がある。
自分を重ねていたのかもしれない。理解されない笑い、理解されない眠気。あーつまらないな。
....これにも罠があって、あの漁師の娘Kから突然電話がかかってきて、彼女に子供がいることを知っているかと訊く。共通の友達であるKSも、さすがはあの子らしい、しっかりしていると褒めていたよ、と口を割らせようとする。私は別に口止めされたわけでもないのだけど、これまでにされてきたことから危険を感じてとぼけておいた。
すると、口止めしたわけでもないのに隠したな、と件の中学の同級生から睨みつけて脅かされた。
あるときなどは彼女、マルチ商法にはまって家に9時まで居座り、入会金2万円を払う申込書を置いて帰った。切羽詰まって背に腹は代えられぬ状況だろうと母も言っていたが、加入すれば私も誰かを巻き込むことになるので断じて断ったが、これも恨み節の一つとなっているようだ。
きれいごとだけでは済まない人間関係ってどこにでもあるけど、ちょっとこれはひどすぎる。私は何回殺されかけたことか。父も胃ろうで栄養補給をして体をパンパンに腫らせて亡くなったが、自然に亡くなったのではないように言う人もいる。
こちらとしてはもう耳を塞ぎたいような気分になる。
件の彼女、葬式が終わって2日後に、ものすごく明るい声で電話をかけてきた。普段暗めの人物像で青年時代から中島みゆきのファンだった彼女が何の目的でかけてきたのだろう。探りを入れるためだ。ようやくここと関わりあって40年目ぐらいで知恵がついた。
本当につらいときには人は口に出せないものだが、何か目的があるときに人は辛さをことさらに強調する。ほとんどが経済的なこと、次には地位や名声(?こんなことして軽蔑されるのがおちだが)。
さらっといえるというのがとても怖いなあと思う。