亀が降ってきた日

空から魚が降ってきた - 村上さんのところ/村上春樹 期間限定公式サイト

わが家が社宅を出て今の家を買って一年目位の5月に、ヒョウが降った。

小学校3年生だった私は放課後居間でテレビを観ていた。突然バラバラと激しい音がして、雨ではない白い物体が降りてくるのを生まれて初めての出来事として受け止めていた。

その物体が降りやんだあと、窓を開けて身を乗り出し、新緑の芝生の上に水滴と小さい氷片がまき散らされた裏庭を見渡した。すると甲羅が裏返った亀が氷のかけらに交じって手足をバタバタさせていた。空から降ってきたのだ。

これはその当時興奮して沢山の人に語ったが、誰もそれについての考察を示唆する言葉を返してはくれなかった。嘘つきと思われたくない為にずっと心の中にしまっていた。

空から亀が降ってきたことは間違いない。良くある事なのだ、おそらく。そして私が見た亀はどこからか運ばれて落ちたのだ。親にも言ったがおそらく適当にいなされただけだったようだ。